2017.02.11

魂を揺さぶる芸術という名の、魔力



こんなことは人生で初めてだった。

魂が透明の糸で虹色を編みあげてゆくような
どこまでも深く満たされてゆく歓び。

魂が傷口を赤く染めながら
どこまでも斬り裂かれてゆくような
絶望的な哀しみ。

そのどちらもが、ある芸術家の作品に触れてからの10日間、
ひたすらわたしの中で続いたのだ。

頭は冴え渡り、覚醒し、眠りは浅く、
幸せな心が充満した瞬間、涙が止まらなくなる。

まるで作品の魔力に取り憑かれたかのように
惹かれて溶けてしまった心。

この現象は一体何なのか?

余りにも突然の事で追いつかない思考。
しかし自問すればするほどその魔力は固い思考を嘲笑い、
逆に勢いを増してゆくようだった。

そんなことが一つの芸術に出来るなんて
信じられなかった。

言葉を変えれば
信じたくなかった。


芸術に触れて感動をしたり、
感覚を刺激されるのはよくある事だ。
さらにその中で数年に一度くらい
稀に影響されるものに出会う。

しかしどんなに素晴らしい作品に出会っても
それでもわたしの何処か隅に
自身がアーティストである以上は他人の作品である、
という確固たる大きく太い線引きがそこには在った。

だからこそ他人のつくったものに
こんなにも揺さぶられることが信じられなかったし
信じたくなかったのだ。




作品は途方に暮れるような
何本もの線香の火の力によって
下書きも一切なく描かれていた。

「描かれる」という言葉がぴんとこないのは
それが人の手によるものなのか、
或いは自然現象なのか、
見分けがつかないくらいに繊細で絶妙で完璧な世界が
たった一枚の和紙に広がっているからで、
作品を離れて眺めると誰もが線香の火によって
これらの作品が産み出されたものだとは気がつけないほど、
見方によってはモノクロ写真と見間違うくらいに
完成度の高さに驚く。


作品の産み出し方が「他にないもの」だから、
「珍しいもの」だから、惹かれるのか?


それはまるで違う。


なぜならこれらの作品には知識人が評価の土台にするような
技法や見せ方や、作家のルーツやその他の要素すら
超越している「神性」たるものが確実に存在し
絶妙に、そして圧倒的に蠢めいているのだ。

作品に触れた者に訴えかけ、
そして魂を強く掴まれ捻られるような
説得力がそこには充満している。


そして理由も分からない涙が出る。
作品から離れた後でさえも。


正直こうやって文に綴ることすらも
この感覚を伝えるのは何かが足りない。
どの言葉も当てはまらないのだ。

そして終いには何もかもの飾りや付属品が
どうでもよくなってしまう。


今生において、生きている間に
自分にとって素晴らしいと
心底感じられる芸術に出会えたことは
とても幸運なことであるし、
今回のこの出会いは確実にわたしの何かを呼び覚ました。


火で燃えた穴の先に

まだ見ぬ未来の自分自身と、
懐かしくも狂おしく複雑な
自身の遠い過去の記憶と、
そして飾りを拭われた等身大の裸の自分を、
みたのかもしれない。

わたしは自分自身をみせられ
憤り、歓びを感じ、涙を流したのかもしれない。


時間軸が何処にあるのかさえ
なぜ惹かれるのか、という理由さえ
もうどうでもよかった。


また生きようと強く、想えたから。



歪で孤独な旅の続きが始まる。
自身の自身による自身のための旅が。

一つの作品と人生がわたしの魂を震わせたように

いつか、それが誰かの、誰かのための
魂を震わせるカケラになる日を想って。


唄うんだ。






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久しぶりにblogに文を綴りました。

去年とか1回しか更新してないし。
しかも旅行記だし。あはは(笑)

ずっと文が産み出せなかった分、
どばーっと文が出てきちゃいました。。


なんだかこの気持ちを、
この記憶をカタチに残したくて。


この文に出てくる「ある芸術家」とは
芸術家の市川孝典さんです。

東京での個展は先日終わってしまったのだけど、
きっとまた日本で個展をされると思います。

というか終わったばかりなのに
今すぐにでもしてほしいくらいです。

だからみんな大きなお金払ってでも作品を購入するんだね。
いまなら分かるな。その気持ち。


孝典さんと個展でお話しをする機会があって、
人柄もとても紳士で優しくて愛あるすてきな方でした。

作品は作家の全てだし、
こんなにすてきだなと感じられる一人の人に
出会えたことは生きる励みになりました。

そしてその個展の場で久しぶりの友人にも偶然会えたのが
さらにこの機会を特別なものにしました。

この全ての美しく絡まった縁を想って、次の再会まで
自分の作品づくりに励みたいと思います∞




冬の満月の日に

たくさんのありがとうとともに
あいをこめて









写真は作家・田中慎弥さんの「夜蜘蛛」の
本表紙に描かれた市川さんの作品より

























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